盲亀浮木



セミが地中で長く過ごした後、地上に出て羽化することは広く知られている。だが、その現場に偶然*出くわしたことのある人はどれくらいいるだろうか。


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 ここから彼(女?)は這い出してきた。ややおぼつかなげな足取りで、それでも迷うことなく、彼はいちばん近い木へとまっすぐに歩いた。



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 彼はまっすぐ上に登りはじめた。




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幹が枝分かれしている部分で、彼は枝のほうを選んでしまった。

 

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やはり間違いだった。彼は枝を戻る



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 分岐点まで戻った彼は、こんどは間違いなく幹を垂直に登ってゆき、そしてわたしの視界から消えた。


 これはわたしにとってステキな偶然だった。
 だが、彼にとってはもっとすごい偶然だったかもしれない。世界中にセミが何億匹いるか知らないが、生まれて初めて見た人間が法哲学者だったセミはおそらく彼だけに違いないから。
 ステキだとは思わなかっただろうけれど。



* セミの羽化を意図的に見るのは難しくないようだ。




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